硝子体手術
糖尿病網膜症や網膜剥離など眼底の病気に対する専門性の高い特殊治療
豊富な実績と確かな技術に裏打ちされた高度な治療を行います。
硝子体手術とは
眼球の中で水晶体よりも奥の部分を硝子体腔(しょうしたいくう)と呼び、ここを満たしている透明でゼリー状のドロドロした液状組織を硝子体(しょうしたい)と呼びます。
硝子体には、様々な疾患で濁りや出血が生じることがあり、また何らかの理由で硝子体が網膜を引っ張ったりすることもあって、それぞれ多種多様な目の障害を引き起こします。
この硝子体腔に起こった疾患を治療する目的で、眼内の硝子体に処置を行う手術が硝子体手術です。
硝子体手術では、白目に3ヶ所小さな穴をあけ、そこから特殊な細い器具を眼内に挿入し、目の中の濁りや出血を硝子体と一緒に取り除き、網膜の穴をふさいだり、網膜にできた異常な膜を除去したり、剥がれた網膜を元に戻したりして網膜の機能の回復を図ります。
当クリニックでは、大学病院と同等レベルの先進の手術設備を備え、院長が豊富な実績と熟練の技術にもとづく安全な硝子体手術を日帰りで行っています。
硝子体手術の概要
硝子体手術の費用
全額健康保険適応 | 1割負担の方 | 約35,000~60,000円(片眼) |
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3割負担の方 | 約100,000~180,000円(片眼) |
※費用は個人差があります。上記金額は手術のみの大まかな目安としてお考え下さい。
当院の硝子体手術の特徴
1.最新の硝子体手術~切開創わずか0.5mmの極小切開硝子体手術~
硝子体手術は、ここ数年来の技術の進歩に伴い、白内障手術と同様により少ない侵襲での手術を目指して、手術のキズ口(創口)が徐々に小さくなりつつあります。
現在国内の硝子体手術施設で採用されている創口径は20ゲージ、23ゲージ、25ゲージの3タイプが一般的ですが(数字が大きいほど創口の切開幅が小さくなります)、当院ではそのうちもっとも創口の小さい25ゲージというシステムで全例手術を実施しています。
この25ゲージという創口のサイズは切開幅がわずか0.5mmであり、そこから眼内へ挿入される器具は、採血や点滴などをする注射針の太さよりもさらに口径の細いものとなっています。
より小さい創口から手術を行うことで、傷口からの出血や感染のリスク、術後の痛みなどが軽減し、キズの治り自体も早くなって術後の回復がスムーズになるため、患者様への負担の軽い日帰りでの硝子体手術が可能となっております。手術によって引き起こされる乱視などの度合いも軽く、術後の視力が良いこともメリットです。
なお、現在さらに切開創の小さい27ゲージでの手術システムも開発されつつあり、当院でも今後随時27ゲージでの硝子体手術も導入予定です。
2.痛みが無く負担の少ない麻酔法
硝子体手術は眼の手術の中でも大がかりで時間のかかる手術のため、白内障手術のように点眼薬による軽い麻酔のみで手術を行うことはできません。
そのため我が国では現在硝子体手術の際の麻酔法として、下記に述べる「球後麻酔」と「テノン嚢下麻酔」の2つの方法が主に用いられています。
当院では、このうち痛みがほとんどなく患者様への負担もより少ない「テノン嚢下麻酔」で全ての硝子体手術を行わせていただいております。
眼球下方の下まぶたの上から眼球の後ろ側の位置に向かって深く針を刺し、眼球の後方に麻酔薬を注入する方法。麻酔の効果としては強力ですが、注射時には相応の痛みを伴い、また稀に眼の奥の血管を傷つけて大出血(球後出血と呼びます)を起こしたり、誤って眼球そのものに針が刺さってしまう(眼球穿孔)といった合併症を引き起こすことがあります。
白目の表面を覆っている結膜とテノン嚢という薄皮の下に、先の丸い針で麻酔薬を染み込ませていくような方法。麻酔時にほとんど痛みはなく、また合併症発生の危険も通常はありません。
点眼麻酔に比べて長時間しっかりと麻酔が効くため、白内障手術の際の麻酔法としてもごく一般的に用いられています。(※当院では白内障手術は点眼麻酔のみで行います。)
このテノン嚢下麻酔は、球後麻酔に比べて麻酔の効果が軽く持続時間も短いため、この麻酔法を硝子体手術に用いるには、痛みがなく短時間で確実に手術を終わらせることが出来るような安定した硝子体手術の技術があることが前提となります。
実際のところ、硝子体手術で用いられる麻酔法としては国内ではどちらかというとまだ「球後麻酔」の方が主流であり、埼玉県内だけで見ても「テノン嚢下麻酔」を採用している施設は限られています。
硝子体手術の適応となる疾患
- 糖尿病網膜症
- 硝子体出血
- 網膜剥離
- 黄斑前膜(黄斑上膜)
- 黄斑円孔
- 黄斑浮腫
- 網膜中心静脈閉塞症
- 網膜静脈分枝閉塞症
- 網膜下出血
(黄斑下出血) - 硝子体混濁
- 細菌性眼内炎
- 白内障術後の水晶体落下
…etc
日本眼科学会のHPに、個々の目の病気に関する詳しい情報が掲載されています。ぜひ参考にご覧下さい。
硝子体手術の流れ
手術準備
手術は仰向けに寝ていただいた状態で行います。
まず、眼の周りと眼の表面を消毒します。
その後、お顔の上に清潔な手術用シーツをかけ、さらに眼の周りにバイ菌除けのシールを貼ります。そして、眼を開いていていただくための器械をまぶたに当てて、準備完了です。
麻酔
麻酔は全身麻酔ではなく、手術をする眼だけに効かせる局所麻酔(部分麻酔)です。
点眼麻酔を行ったのち、白目の表面を覆う薄皮の中に麻酔薬を染み込ませるテノン嚢下麻酔という方法で眼球全体に麻酔を効かせます。注射はしませんので、麻酔による痛みはほとんどありません。
手術
手術時間は通常1時間弱~2時間程度ですが、患者様の眼の状態より変わってきます。
(とくに重症の症例では稀に3時間近くに及ぶ場合もあります。)
眼科手術用の顕微鏡を使って行いますので、術中は上からまぶしい光が終始当たりますが、まぶしさには徐々に慣れてきます。
手術中は眼を触られる感じや少し眼を押されるような感じはありますが、痛みはほとんどありません。
大変細かい操作をしておりますので、手術中はなるべく、眼をキョロキョロ動かしたり、お身体を急に動かしたりなさらないように気をつけて下さい。
局所麻酔ですので手術中は意識もはっきりしており、耳も聞こえますし話すことも可能です。動きたいときや何か不具合のある場合には、我慢せずいつでもドクターにお声をおかけ下さい。
手術が終わりましたら、眼帯を装着して回復室にお戻りいただきます。
手術の合併症について
硝子体手術では、術中・術後に以下のような合併症を生じる可能性があります。
この内、出血や感染など術後の見え方に大きな影響を及ぼすような合併症は実際には極めて稀なものですので、通常はあまりご心配いただく必要はありません。
それ以外の一般的に起こりうる合併症のほとんどは、普通適切な治療を施すことにより対応が可能ですので、どうぞご安心下さい。
詳しくは、担当の医師またはスタッフにお気軽にお尋ね下さい。
1.網膜剥離
手術後に網膜剥離が生じることがあります。この場合、再度手術を行うことにより、剥離した網膜をもとに戻す必要があります。
2.出血
手術後に眼内に出血が生じることがあります(硝子体出血)。出血の量が少なければ自然吸収を待つだけでよいのですが、出血量が多く吸収に時間がかかる場合は、再手術をして出血をきれいにする必要があります。
また、手術中あるいは手術後に突然目の奥の動脈から急激な出血を生じることがあります(駆逐性出血)。手術中に血圧が上がった場合、強く緊張した場合、咳き込んだ場合などに起きやすく、頻度は極めてまれですが(発生頻度10,000例に1件程度)、生じた場合は視力が損なわれ失明に至る場合もあります。
3.感染
手術の後、眼の中に細菌が侵入して眼内で強い炎症を起こすことがあります(細菌性眼内炎)。頻度は極めて低いですが(発生頻度2,000例に1件程度)、とくに毒性の強い細菌が感染した場合には高度の視力障害を来すことが多く、時には失明に至る場合もあります。
4.眼圧上昇
手術の後に眼圧が高くなることがあります。多くの場合は一時的なもので、点眼や内服治療でコントロール可能ですが、まれに眼圧が十分下がらない場合には緑内障の手術が必要となることがあります。また、糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症などで病気の勢いが強いときには、血管新生緑内障という特殊な緑内障を起こして極めて治療が難しい状態となり、高度の視力障害を来すことがあります。
最後に・・・
当院での硝子体手術について、ここまで一般的な内容を説明させていただきました。
しかし硝子体手術で治療を行う疾患は多岐に渡るため、実際には疾患によって患者様ごとに状態は大きく異なります。そのため一般的な内容だけでは不十分な患者様ごとの状況に即した部分につきましては、実際の診察の際に院長またはスタッフから追加で詳しくご説明をさせていただきます。
ご不明な点などございましたら、遠慮無く医師またはスタッフにご相談下さい。
患者様に安心して手術を受けていただけるよう、スタッフ一同努力して参ります。